男女2人のオシャレR&Bデュオ、Groove Theoryが1995年リリースしたデビュー・アルバム、「Groove Theory」。これ以降はアルバム・リリースはなかったはず…。
アメル・ラリュー(Amel Larrieux)の優しくて音のように流れることもあれば、たまに不整脈みたいに聞こえてjazzを感じる歌声と、ブライス・ウィルソン(Bryce Wilson)のオシャレなアレンジ力とプロデュース力が、smoothでsilkyだったり、groovyだったり、jazzyでmellowだったりする調べを生みだす。
ジャケットからも感じるけれど、ブライスはアメルの能力を引き出す影武者としてプロデュースを楽しんでたんだろう。
シングルカットされた曲は、ブライスがプロデュースした曲でもあるRhythm-N-Bassの「Tell Me (If You Want Me Too)」のトラックを使用した「Tell Me」(”I been doin my own thing”のフレーズ、Sadat Xの「The Lump Lump」を思い出す)、あまりシングルぽくないメロウな「Keep Tryin’」と、キュートで耳に残るサウンドが印象的な「Baby Luv」。「Baby Luv」のSummer Groove Remixは、Slaveの「Just a Touch of Love」をサンプルして、オリジナルとはまた印象が全く違ってクール。
今聴くと新鮮。
トラックリスト
- 10 Minute High
- Time Flies
- Ride
- Come Home
- Baby Luv
- Tell Me
- Hey U
- Hello It’s Me
- Good 2 Me
- Angel
- Keep Tryin’
- You’re Not the 1
- Didja Know
- Boy at the Window
このアルバムが発売した頃の私には、まだ歌詞がすっと入ってくる耳をもっていなくて、だからこそアメルのような歌声は「音の一つ」として心地よく聴こえていた。
時が経って、音楽をゆっくり聴くことも多くなってきた最近は、歌詞が自然に聞こえてくるようになってきた。そして、その歌詞に心を動かされることも増えてきて…このアルバムでハッとした歌詞だったのが、冒頭の「10 Minute High」。
ピックアップ曲「10 Minute High」
Written By Amel Larrieux, Bryce Wilson & Kevin Deane
日本語意訳:NAOKO
She,
She doesn’t need it but she won’t try
Try to release it
‘Cuz she thinks she’ll die
Dependent on it, for it, she’ll lie
It’s only a 10 minute highあの子には必要ないのに
あの子はやめようとはしない
あの子は「そのうち死ぬわ」と思ってるから
やめられなくてウソをつく
「10分間の幸せ」のためにEyes, that witnessed a father
Beat on a mother
Witnessed a system take away her only brother
No one ever said that they loved her
She used to shut her eyes and make the pain subside
But now she’s got her父親が母親を殴る姿をその目で見て
唯一のきょうだいを奪われてしまうという社会のしくみを経験して
誰からも「愛してる」と言われることなく
あの子は目を閉じて苦痛を和らげてきた
でもあの子は今…10 minute high
Just for a little while
She’s queen of all the skies
If a hit is bad, another one she can buy
Everybody tells her to stop
She would try
But nobody gave her a good reason why「10分間の幸せ」を手に入れた
ほんの少しの間
全世界の女王になった気分を味わう
バッドに入った時にはまた次に手を出す
みんなは止めろと言ってるし
あの子も止めようとするけど
結局誰もあの子に止める理由を見つけてあげられないTime Has taken its toll, she looks too old for seventeen
The girl is much too bold
Her heart is cold when it used to be of gold
Her future has no chance to unfold
She’s used her body to get her way
Is she ashamed of the games she’s played?
But her best defense is to block out all the pain
But first she buys her…時間だけが過ぎていって
17歳に見えないくらいに老けて
あの子はふてぶてしくなってしまった
輝いていたのに冷たい人になって
あの子の未来は開かれることはない
自分の道を生きるためにカラダを使う
そんなことしてあの子は後悔してないのかな?
でもあの子が自分を守る一番の方法は苦しみから目を背けること
で、あの子がまず買うのは…10 minute high
Just for a little while
She’s floating through the sky
What’s she gonna do when she no longer can fly?
Is she gonna land on her feet or come down to die
Or is she gonna just break down and cry?「10分間の幸せ」
ほんの少しの間
あの子は空に浮かんで泳いでいられる
飛べなくなったらどうするんだろう?
自分の足で着地する?それとも落ちて死んじゃう?
それとも壊れたように泣くのかな?When she comes down it all becomes too clear
She knows that someday she should face her fears
But she lost touch of reality and over the years
She’s forgotten how it feels to be real降りてきたときにすべてはっきりするのね
あの子は自分がいつか不安に直面することをわかってる
でもずっと現実から離れたとこにいたから
もう現実がどんなものかも忘れてしまってるIt’s early morning, quiet is the street
She lays in silence,
The cold cement beneath her feet
She passed away and today’s her eighteenth birthday
And all she’s left me to say is…早朝、通りは静寂に包まれて
あの子は静かに横たわってる
足元はコンクリートで冷えて
あの子は死んでた – 今日はあの子の18歳の誕生日
あの子が最後に残した言葉は…She just had her last 10 minute high
Did she contemplate that it would take away her life?
She probably knew, but she had no reason to fight
There is not a breath from her lips, not even a sigh
If only she had known wrong from rightあの子は最後の「10分間の幸せ」を味わった
それが自分の人生をダメにするって考えなかったのかな?
あの子はわかってただろうけど立ち向かう理由もなかったよね
あの子はそっと息を引き取っていった
もしあの子がいいことか悪いことかの判断ができてたら…Wrong from right
If only she had known wrong from right
If only she had known
Known wrong from right
Goodbye, goodbye
Goodbye, goodbye, girl
Goodbye, byeあの子がいいことか悪いことかの判断ができてたなら…
あの子がいいことか悪いことかの判断ができてたなら…
バイバイ、バイバイ
さよなら
父親のDVで家族はバラバラ、自分もきょうだいも離れ離れに施設に入れられて、10代半ばでカラダを売って生活する「あの子」。
彼女の幸せはドラッグで飛んでる10分間。
彼女は本当はこんな生活を断ち切りたいけど術もなく、18歳の誕生日に路上で横たわったままあの世にいってしまう…
なんて悲しい曲なんだろう。アメルの歌声はその光景を淡々と、楽器を奏でるように歌う。それがまた「ありがちなこと」というのを感じさせるようで、心に響きます。
Amelのソロ・アルバム「Bravebird」ついてはこちら↓
タイトル曲のリリックがまた、泣けてきます。
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