1994年公開の映画、「Jason’s Lyric (邦題:ジェイソンズ・リリック)」。
ベトナム戦争からアメリカ軍が撤退した1973年くらいにはまだ子供だった兄弟が、これから働き始めるという頃の1980年前半から後半を背景に、兄弟の兄である主人公Jason(Allen Payne)が、家族の過去の出来事と絆、兄としての責任と自分自身の恋愛に翻弄される姿を描いた映画。

監督:Doug McHenry
脚本:Bobby Smith Jr.
出演:Allen Payne, Jada Pinkett Smith, Bokeem Woodbine, Anthony ‘Treach’ Criss, Forest Whitaker, Eddie Griffin
戦争は人を破壊する。
優しかった父親も、戦争によって変わってしまった。特にベトナム戦争の頃は、世界がアメリカが急速に変わってた頃。国のために尽くして帰ってきても、人は口先だけの「名誉」で向かえるだけで、何もしちゃくれない。自暴自棄になった父親のもとでは、将来に希望を持てない子や愛に飢えてるがそれを表現できない子が育ってしまっても仕方がないのか。
家族を取るか、恋人を取るか。
言葉で書けば二者択一だけど、そんな簡単なことでも、どちらが正しいということでもないよね。家族に代わるものって無い。かといって、その家族が自分の重荷になることもある。でもその重荷にも、それだけの理由があるということを分かっているし。常にそんな風に自分の中で葛藤しなきゃならない環境の人って、少なからずいると思う。この映画の結末は「救われないなぁ」とブルーな気持ちになる反面、不適切かもしれないけど「ハッピーエンド。二人にとっては、よかったね。」と思ってしまう。
悪態つくしかできなくなってしまった主人公の弟役を、Bokeem Woodbineが良く演じてる。

彼が「DEAD PRESIDENTS(邦題:ダーク・ストリート/仮面の下の憎しみ 1995年公開)」で演じた生首をリュックに入れてたシーン、忘れられへんねんけど。
他は、Larenz Tateの兄さんのLahmard J. Tateやら、Naughty By NatureのTreachが悪役で出演。実際にTreachの元妻であるSalt-n-PepaのSandra ‘Pepa’ Dentonのクレジットがあるけど、どこに出ていたか不明。
しかしJada Pinket Smith演じる、Lyricの髪型で時代を感じるわ。やりきれない父親役を「SMOKE(邦題:スモーク 1995年公開)」にも出演しているForest Whitakerが演じていて、これまた切ない。

Forest Whitaker、「SMOKE」でも父親役だったよね。あの映画も切ないけど、話の繋がり方が見事な映画だったな。
JasonとLyricの、いわゆる「アオカン」のシーンが、生々しいくらい熱演。が、そこがお花畑なのを冷静に観てると、ちょっとコメディ感溢れてくる。Lahmard J. Tateの演技を観ていると、「DON’T BE A MENACE(邦題:ポップ・ガン 1996年公開)」のあの役を思い出して、笑ける。という、ブラック・ムービー好きにとっては、ちょっとした楽しみのある映画でもあります。
起伏のない、淡々とした映画ではあるけれど、今の時代には味わえない、表現しきれないだろう切なさが、この映画が公開された94年に20代半ばだった私にとってリアルに感じられた映画です。
サントラ「Jason’s Lyric: The Original Motion Picture Soundtrack」も、90年半ばまでのトレンドがいい具合に反映されていて、今でも聞きたくなる1枚。D’Angeloが書いた「U Will Know」はBlack Men Unitedとクレジットがあるんだけれども、このユニットに参加しているアーティストがTevin Campbell, Boyz 2 Men, Usher, Brian McKnight, Aaron Hall, Joe, R.Kelly, Tony Toni Tone, Keith Sweat, Al B Sure, Gerald Levert, Mint Condition, Raphael Saadiqなどで、さらにバックでLenny Kravitzのギターが聴けるという贅沢なもの。ゴスペル調で、元気にさせてくれる曲です。他には、名曲Jimmy Cliffの「Many Rivers To Cross」をOleta Adamsがカバー。バリトン・ボイス美しいK-Ciが、Bobby Womackの「If You Think You’re Lonely Know」を切なく歌いあげております。
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