ギャングから抜け出して更正していく過程を、父と子の繋がりに焦点をあてて描いた映画、1994年公開の「SOUTH CENTRAL (邦題:サウス・セントラル 非情の街)」。舞台は1982年のロサンゼルス、サウス・セントラル。
監督:Steve Anderson, produced by Oliver Stone
出演:Glenn Plummer, Byron Minns, Lexie Bigham, Vincent Craig Dupree, LaRita Shelby
黒人ギャングとなる男の子たちの多くが「父親像(father figure)」を持てないまま、若いうちに父親になったりするのだろう。「父親」という存在が近くに居た経験が少なくて自分自身もまだ人生経験がないから、親としてどう振舞ったらいいかわからないし、子供がうっとうしく思えたりして、結局は自分も子と妻を捨てちゃうことになる。環境を変えようと思っても、ギャングから足を洗うのも容易ではないし、まっとうな仕事にも就くことも難しい。
確かマルコムXもそうだけれど、刑務所でいい人に出会ってゆっくり考える時間が持てて改心できるといったストーリーを見かける。辞書を全部書き写しながら言葉を覚えて、今まで知らなかったことを知ると、これまで出来なかったことにも取り組めるんだろう。
この映画も刑務所に「改心への鍵を握る人物」がいて、グレン・プラマー(Glenn Plummer)演じる主人公のBobbyはその人物からMarcus Garvey1、W.E.B. DuBois2、Booker T. Washington3などの歴史上の人物を知ることで、「attitude」を学ぶことになる。
「attitude」の大切さ-より良い道を選択できると自分自身が思えるようになれば、自分自身にも自信がもてるだろう。そういったattitudeで人と接することができるようになれば周りの目も変わってくるし、自分を取り巻く環境も自然と変わってくるのだろう。しかし、実際のアメリカの刑務所では、こういった人物に出会えて改心するってよくあることなんだろうか?
こういう映画を見ていつも思うのが、黒人は黒人たち自身で自分らを社会的に不利にしてる点も多いんじゃないかってこと。ギャングに入ったりドラッグの売人やポン引きしてたら、まっとうに働くより多くのお金が稼げるのだろうけれど、それが悪循環になるのは明らか。縄張り争いやら、ドラッグの売買や使用、不特定多数とのセックスでの感染症やらで自らをダメにして、またその子供達もそれを受け継いで同じ道を繰り返す。しかもその根源がドラッグといった、白人や他の文化圏から流れてきたものだったりするわけで。悪循環をどこかで断ち切って、この映画のBobbyのように自らで変化して、子供には繰りかえさせない環境を作ってやってほしい。
余談だが、この映画の舞台となっている80年代のファッションってなんか滑稽よね。流行は繰り返されるとはいうけれど、80年代のエッセンスってちょっとこっぱずかしいのは、実際私がその時代を生きたからだろうか。
「FRESH 邦題:フレッシュ (1994)」、「MENACE 2 SOCIETY 邦題:ポケットいっぱいの涙 (1993)」などとあわせて観て欲しい映画。
(2000年頃 投稿)
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